光の乗り物

満月の白さが
シャッター越しの室内灯と溶けあって
境目をなくしていた。

それでも
月の光だけが放つ静かな脈動がある。

かぐや姫が月へ帰るという古い語りが
ふいに現実のように思えた夜。

もしかすると
月からの使者は またこの世界のどこかにいるのかもしれない。
使者は この星で何を見て 何を想うのだろう。

いずれ月へ帰るとき
この星にも「幸福」という名の花が咲いていたと
どうか伝えてほしい。

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